下の記事の続きです。
まあ、とにかくここからは、僕が脚本を提供した 劇団ヘロヘロQカムパニー例外公演 sechs「タイム・ドカーン~嘘への扉~」 についてのお話です。 ヘロQに芝居を書くのは、今回で3回目。 新人公演としては、2004年の「ヘロヘロ大パニック〜バレルナキケン~」以来、 5年ぶりとなる作品でした。 既にいろんなところで言っているのですが、僕個人としては、 今回の「タイム・ドカーン~嘘への扉~」は、僕がこれまで作ってきた 全ての脚本の中で最高傑作だと思っています。 実は、脚本の第1稿が完成した時点で「今回は名作かも」と思いました。 きっと、物語の完成度としては、去年、同じくヘロQに書いた 「マッハ・レコーディング A GO GO!!」の方が高いのかも知れませんが (舞台のできという意味ではありませんよ) あくまで、個人的な、そして作家としての満足度などの面において、 最も納得するシチュエーションコメディが書けた気がします。 1年以上前の下の「HOT FUZZ」の記事でコメディとサスペンスの ことに触れていますが、今回はそれを実演してみたようなイメージです。 出来ていないタイムマシーンを出来ているように見せるという わかりやすいコメディーシチュエーション。 (余談ですが、実は、バレルナキケンは、もともとこういう構造の話にする予定でした。 タイトルの「バレルナキケン」というのは、そういう意味で、 映画「グッバイレーニン」のような話にする予定でした。 なんだかんだでそうはなりませんでしたが……) 視点は騙す側にあるので、コメディーになるのですが、 今回はこれの更に上に、もう一つ観客に見せていない事実を 作ることでミステリーとしての仕掛けを作ってありました。 しかも、謎としてのフリを入れていないので、ラストで急に 今まで無かったはずの謎が生まれ、数珠つなぎで謎解きが始まるーー という手法をとってみました。 今回は、自分でもその辺が上手く出来たんじゃないかなと思います。 脚本家の自己満足かも知れませんが、お客さんに 「騙された」と言って貰った時は、本当に嬉しかったです。 これまで、僕が書いてきた本というのは、 「三谷さんならどう書く?」 ってことを考えながら作ってる感じもあったし、 ああいうものが作りたいって気持ちが一番にあった気がします。 でも、今回は、きっと三谷さんは書かないタイプのシチュエーションコメディで、 僕の色が出せたかなって思うのです。 なんか、こんな風に脚本のシステマチックな話をする気はなかったんですが、 いつの間にかそればかりになってしまいました。 話を変えます。 もともと、この作品の最初のアイディアが出来たきっかけは、 ポアロの「No Negative, No Life.」の中に書いた「やっと恋ができた」の歌詞に 「憧れてた『夏への扉』で伝えたいんだ」 という歌詞を書いたことに発します。 これをきっかけにそれまで、ちゃんと読んだことがなかった ハインラインの「夏への扉」を読んでみようと思い、読んでみました。 思ってた以上のクォリティーとさわやかな読後感に感動して、 「これを現代風にアレンジして芝居にしたら面白いかも」 と思ったことがきっかけです。 ビッグバンで行った韓国旅行の帰り道で長沢さんに 「舞台上に猫を出すとしたらどうします?」 と相談したのを覚えています。 それから、ヘロQの新人公演のお話をいただいて、 内容のブレスト会議の時、関さん長沢さんに『夏への扉』の話をしました。 芝居とタイムマシーンは非常に相性が良いですし、 関さんも「タイムマシーンモノ良いですね」ということで、作ってみることに。 結局、原作的な扱いではなく、タイムマシーンという部分だけを残して 全く違うシチュエーションコメディにすることにしました。 それでも、『夏への扉』のさわやかな空気感は何となく残したかったので、 それを意識して書いてみました。 僕の書いた脚本では始めて恋愛要素もちょっぴり入ってますし。 また、キャラクター作りも『夏への扉』を意識してみました。 主人公 ダン(ダニエル・ブーン・デイビス) → 段田文彦 ヒロイン リッキイ・ジェントリイ → 鳥井桐香 妹 マイルズ・ジェントリイ → 鳥井舞子 恋敵 ベル(ベリンダ・シュルツ・ダーキン) → 鈴森尹明 博士 ヒューバート・トウィッチェル → 飛羽塔子 助手 チャック・フロイデンバーグ → 風呂井誠一 協力者 サットン夫妻 → 佐藤夫妻 猫 ペトロニウス(ピート) → ペトロニウス などなど。 おしゃれな感じじゃないですか? あと、ラストも『夏への扉』のさわやかさをかなりイメージしました。 書きながら、頭の中に山下達郎の『夏への扉』が流れていました。 実際に、音響の前田さんにお願いして、舞台上にも山下達郎の『夏への扉』を 流して貰いました。さわやかで良い曲ですね。 今回は、例外公演、つまりは新人公演ということで、かなり稽古は難航していたようです。 実は脚本は、「あいつちょっとこっちみてやんの。」の全てのコントより 先に書き上げ、6月の早い段階で出来上がっていました。 が、稽古がなかなか進まず、最終的な大幅変更の依頼が来たのが、本番の一週間前。 ヘロQとしては、いつものことながら流石に「ここに来て?!」 と思ってしまいました。 僕の脚本の問題点のひとつに、演出すると伸びるっていうのがあります。 脚本上は、短くてもお芝居にすると伸びる。 これは、僕の本は殆どの話の展開が笑いのネタの中で進行していきます。 僕自身はお芝居もコントも分けて書いているつもりはないので、 ネタが続いても何も問題ないのですが、お芝居の人には 「ケツをつける」という感覚があるそうです。 例えば、10万円の壺を割ってしまった相手に対して…… 風呂井「弁償しますよ」 健児「20万ですからね!」 風呂井「値段上がってません?!」 というネタがあったんですが、僕が書いたのはここまで。 しかし舞台上では…… 風呂井「弁償しますよ」 健児「20万ですからね!」 風呂井「値段上がってません?!」 健児「慰謝料込みです!」 まで、台詞が足されています。 つまり僕が書いた上の状態では、「健児」の気持ちの ケツがついていないということで、ここまで台詞が増えるわけです。 しかし、僕の感覚では台詞は全てギャグなので役者の気持ちの 整理は考えていないし、必要性を感じないため書いていません。 なので、実際に演出すると伸びるんです。 ということで、尺の調整などで一週間前に台本の変更が来ました。 あら、気がつくとまた台本の話をしていますね。 まあ、とにかく、一週間前に大幅変更を行うという大変な状態の中、 新人の皆さんは頑張っていました。 今回、殆どの新人さんとは、初めましてだったんですが、 なんだか初々しくて、みていて嬉しくなっちゃいました。 そして、5年前に僕が新人公演を書いた時に、 まだ殆ど演技経験がなかった上田君はいつの間にか結婚して、 みんなの先輩として芝居を引っ張っていました。 非常に感慨深いです。 僕はこの5年何も変わってないですね。 とにかく一番大変だったのは、主人公の段田役の兼島信哉君です。 僕の本は、基本狂言回しの人が出ずっぱりで、本当に大変なんです。 特に今回は、一人でずっと高いテンションのまんま 振り回されるので、喉の負担も大きいですし、体力的にも大変な役回りです。 あげく、飲み物を飲む間もあまりないですし、舞台から引っ込むタイミングも殆どありません。 ずっと「申し訳ないな」と思いながら舞台をみてました。 でも、兼島君の一生懸命さはお客さんにも伝わったんじゃないでしょうか? その熱気は、どんな技術的な芝居より、お客さんの笑いを連れてきたと思います。 あと、僕がリアルに恋してしまったこの作品のヒロイン 「鳥井桐香」を演じてくれた杉崎聡美さん。 彼女にもロッカーに入る度に体中をロッカーにぶつけ 楽日にはアオタンだらけになりながらも頑張って貰いました。 桐香の笑顔は、とても無邪気で、楽しそうで、素敵だったと思います。 あんな女の子が僕の周りにいたら、きっと僕は すぐに好きになってしまうでしょう! ラストの段田君とのやり取りなんて、 何度も舞台をみながら、キュンとしてしまいました。 段田君がうらやましいです。 いつも思うのですが、ヘロQのみなさんと一緒になると心が温まります。 ヘロQさんとは、僕は公演ごと、「点」でしか、付き合いがないのですが、 本当にみなさん家族的で素敵です。 関さんや長沢さんを始めとした、劇団員の皆さんの人柄なんだと思います。 僕も、みなさんの家族にはなれなくても、時々遊びに来るウザイ親戚の おじさんくらいになれれば嬉しいなって思います。 そんなこんなで、僕の2009年の夏は、 久々に青春を感じた夏でした。 まるで、タイムマシーンで思春期に戻ったような…… ヘロQの全公演後、高田馬場で朝まで打ち上げして、 家に帰って仮眠。 眠い目をこすりながら仕事のため部屋を出た、8月24日。 i-Podからは山下達郎の『夏への扉』。 自分の部屋のあまり重くない扉を開けたら、 風が急に涼しくなっていて、 「ああ、夏が終わったんだなぁ……」 と思いました。
by poaroman
| 2009-09-04 01:38
| 雑記
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